はじめに
一般的に美容や健康に良いとされている海藻ですが、それを摂取する際の方法によっては、健康に悪影響を与える可能性があることをご存じでしょうか？
特に、「ダイエットや健康維持を目的として」海藻を日常的に大量に摂取することは、健康上のリスクを高める可能性があります。
本記事では、避けるべき海藻の種類と、海藻の過剰摂取がもたらす様々な影響について、詳細に解説しています。
海藻は適切な量を摂取すれば、非常に健康に良い食品となります。
この記事では、海藻の適切な摂取量についても解説していますので、日々の食生活に活かしていただければ幸いです。
摂取すべきではない海藻！毒性を持つ海藻とは？
多くの人に美味しく、健康に良いと認識されている海藻類の中には、食べるべきでない種類も存在します。
特に毒性を持つ海藻を誤って摂取することは、最悪の場合、死亡事故に至ることもあるため、細心の注意が必要です。
特に避けるべき海藻の種類としては、以下の2種があります。
・オゴノリ
・ウルシグサ
これら2種の海藻を摂取すべきでない具体的な理由について、本記事では詳しく解説しています。
摂取すべきでない具体的な理由について
オゴノリは、日本全域の海岸線に自然に生息しており、冬の時期がその最も美味しい旬とされています。
この海藻は、独特の鮮やかな緑色で料理に色彩を加え、よくお刺身の添え物として使われています。
海岸の岩場で自生するオゴノリは、わかめやひじきなどと並んで海岸に漂着することがありますが、生で摂取することは非常に危険です。
オゴノリそのものに毒はありませんが、問題はオゴノリに含まれる特定の酵素です。
この酵素が魚の脂質と反応すると、体内でプロスタグランジンE2という有毒な物質が生成されるのです。
特に新鮮なオゴノリでこの酵素の活動が活発になるため、食中毒のリスクが増大します。
特に、プロスタグランジンE2は女性に強い影響を与えることがあり、日本で報告されたオゴノリに関連する食中毒による死亡事故は、全て女性が被害に遭っています。
市販されているオゴノリは、毒素を取り除くために煮沸処理や石灰処理が施されているため、安心して食べることができます。
ウルシグサの危険性について
ウルシグサは、細かく枝分かれした羽のような葉を持つ褐藻の一種で、日本の東北地方から北海道にかけての寒冷な海域に生息しています。
この海藻は、約0.3メートルから1メートル程度の大きさに成長します。
【ウルシグサの特性】
– 体内に有害な硫酸を蓄えている
– 陸上に漂着するとすぐに死に、その際に青緑色へと変色する
– 死んだウルシグサは硫酸を放出し、周囲の生物に害を及ぼすため漁師から忌避される
ウルシグサに蓄えられた硫酸は、皮膚に触れた際にやけどを起こす危険性があります。
そのため、海岸で見かけた場合でも、決して素手で触れないように注意が必要です。
また、生の状態でも加熱しても、食用には適していません。
わかめ摂取に関する誤解の解説
「毎日わかめを食べると死に至る」という誤解に関して、実際にはわかめは健康に良い食品ですが、適量を摂取することが重要です。
わかめを過剰に摂取すると、栄養バランスが崩れ、健康上の問題を引き起こす可能性があるため、適量を守ることが求められます。
「毎日わかめを食べると危険」という都市伝説について
「毎日わかめを食べると危険」という都市伝説を耳にしたことがあるかもしれませんが、実際にはこの話には科学的な根拠はありません。
むしろ、わかめなどの海藻を日常的に摂取することは健康にプラスの影響を与える可能性が高いです。
科学的な研究によると、わかめを含む海藻の定期的な摂取は、虚血性心疾患のリスクを減少させる効果があることが明らかになっています。
つまり、適切な量の海藻を毎日食べることは、健康に良いとされています。
この研究では、海藻をほぼ食べない男性グループと比較して、日常的に海藻を食べる男性の虚血性心疾患のリスクが約24％低くなることが確認されました。
女性に関しても、同様の結果が得られ、海藻をほとんど摂取しない女性と比べて、毎日海藻を食べる女性のリスクが約44％も低減していることが示されています。
ただし、市販される海藻製品には摂取量の上限が設定されており、過剰な摂取は甲状腺疾患を引き起こす可能性があるため、1日の推奨摂取量を守ることが重要です。
透明な「クリスタル」海藻に関する情報
レストランでサラダのトッピングとして使われることがある透明でプチプチとした食感の「クリスタル」は、海藻を原料とした食品です。
このクリスタルの原材料は、海藻から抽出されたアルギン酸ナトリウムで、無味無臭で加工された食品です。
【アルギン酸ナトリウムの特徴】
– ワカメや昆布などの海藻に含まれる一種の食物繊維
– 安全性が高い天然由来成分
– 便通の改善やコレステロールの排出効果に期待
アルギン酸ナトリウム製品は、ヨウ素や他の添加物を除去して製造されており、健康に悪影響を与えることなく安心して食べることができます。
さらに、クリスタル海藻には体に良い栄養成分が含まれていることも特筆すべき点です。
【クリスタル海藻に含まれる栄養素とその効能】
クリスタル海藻は、以下のような栄養素を豊富に含んでいます。
– タンパク質
– 食物繊維
– ナトリウム
– カルシウム
これらの成分が豊富に含まれているクリスタル海藻は、脂肪分が少なく、カロリーや糖質も低いため、ダイエットをサポートするとともに、生活習慣病の予防にも役立つとされています。
海藻の過剰摂取に伴うリスク
海藻は一般的に健康に良い食品とされていますが、過剰に摂取すると、どのような影響があるのでしょうか？
実は、海藻を過度に摂取すると、甲状腺疾患のリスクが高まることがあります。
さらに、消化器系の不調や腹痛、吐き気などの症状を引き起こす可能性もあるのです。
海藻の過剰摂取によって生じうるリスクを詳しく見てみましょう。
海藻に含まれるカリウムの量とその重要性
カリウムは、血圧の正常化に寄与するなど、重要なミネラルです。
海藻類は特にカリウムを豊富に含んでおり、乾燥状態の海藻ではその含有量がさらに増加します。
【カリウム含有量が多い海藻とその量（100gあたり）】
– 昆布（刻み昆布）：8,200mg
– ひじき（干しひじき）：6,400mg
– わかめ（乾燥わかめ）：5,200mg
– 利尻昆布（乾燥）：5,300mg
– あおさ（素干し）：3,200mg
(出典：文部科学省「日本食品標準成分表2020年版（八訂）」)
健康な人が通常の食生活でカリウムを過剰に摂取して健康に悪影響を及ぼすことは一般的に少ないとされています。
しかし、腎機能に障害がある人は、カリウムの過剰摂取により高カリウム血症になるリスクがあるため、注意が必要です。
「高カリウム血症」とその影響
「高カリウム血症」とは、体内のカリウム排泄機能の低下により血液中のカリウム濃度が通常よりも高くなる状態を指します。
この状態に陥ると、麻痺や手足のしびれ、筋力の減退などの症状が現れることがあり、場合によっては無症状のこともあります。
高カリウム血症が適切に治療されない場合、致命的な心不整脈が生じる可能性があるため、非常に注意が必要です。
特に腎機能障害を持つ人は、カリウムの摂取量を医師の指導の下で慎重に管理することが求められます。
ヨウ素の過剰摂取に関する危険性
昆布やわかめなどの海藻には、ヨウ素が豊富に含まれています。
ヨウ素は、体の様々な重要な機能を調節する役割を持ち、特に甲状腺ホルモンの合成には欠かせないミネラルです。
甲状腺ホルモンは体の代謝や成長に深く関わっているため、妊娠中や授乳期の女性、胎児や乳幼児の健康にとって非常に重要な栄養素です。
しかし、ヨウ素を過剰に摂取すると、中毒症状や甲状腺機能障害、甲状腺がんのリスクが高まる可能性があります。
特に、海藻の頻繁な摂取と甲状腺がん発生との間には相関関係が示されており、海藻をほぼ毎日摂取する女性では乳頭がんのリスクが顕著に増加することが指摘されています。
通常の生活においてヨウ素を過剰に摂取することは稀ですが、海藻の過剰摂取はヨウ素過剰を引き起こすリスクがあります。
特に、妊娠中の女性や乳幼児はヨウ素に敏感であるため、これらの群体がいる家庭では海藻の摂取量に注意することが重要です。
海藻の消化に関する情報
海藻は消化しにくい特性があります。
この理由の一つは、海藻に含まれる水溶性食物繊維の存在です。
この種類の食物繊維は、胃や腸の消化酵素で分解されにくい性質を持っています。
日本など特定の地域の人々の腸内には、これらの水溶性食物繊維を分解することができる特有の腸内細菌が存在することが知られています。
しかし、これらの腸内細菌が全ての日本人に存在するわけではないため、個人によっては海藻の消化に苦労することがあることを理解しておくことが重要です。
特有の腸内細菌を持つ人でも海藻を過剰に摂取する際の消化と排泄
特定の腸内細菌を持っている人であっても、海藻を過剰に摂取すると、消化されずにそのまま体外に排出されることがあります。
海藻に含まれる食物繊維は加熱処理を施すとその量が減少する傾向にあります。
実際、海藻の食物繊維は加熱することで低分子化が進み、約6時間の加熱によってその量が元の1/3以下に減少することが確認されています。
そのため、消化に問題を抱えている人は、加熱処理された海藻を摂取することが望ましいとされています。
海藻の過剰摂取による吐き気のリスク
海藻はもともと消化しにくい性質を持っており、過剰に摂取すると吐き気や胃の不快感を引き起こすことがあります。
海藻に含まれる水溶性食物繊維は、胃の中で水分を吸収し、長時間胃内に滞留することで吐き気を引き起こす可能性があります。
特に、乾燥わかめには注意が必要です。乾燥わかめは水で戻すことを前提に加工されており、水で戻すとその体積が5〜10倍に膨らむ性質があります。
そのまま摂取すると、胃内で膨張し、胃痛や吐き気の原因となることがあります。
さらには、内臓の許容量を超えるほど膨らむことで内臓破裂の危険性も生じることがあります。
そのため、乾燥わかめを摂取する際は、必ず適切に水で戻してから使用することが重要です。
海藻摂取による下痢の可能性
海藻を大量に摂取することで下痢を引き起こすことがあります。
これは、海藻に含まれる水溶性食物繊維によるものです。
水溶性食物繊維は水に溶けやすく、腸内環境を整えるとともに便を柔らかくする効果があります。
この特性から、便秘の緩和に役立つ成分として知られています。
しかし、海藻を過剰に摂取し、水溶性食物繊維を大量に摂ると、腸内細菌の活動が活発になり過ぎ、便が柔らかくなりすぎて下痢を引き起こすことがあるのです。
海藻の健康への効果とその利点
海藻は、低カロリーで低糖質であると同時に、必要なビタミンやミネラル、豊富な食物繊維を含む健康に良い食品です。
適量を摂取することで、海藻は健康に多くの利点をもたらしますが、過剰に摂取すると健康に悪影響を及ぼすこともあるので注意が必要です。
【海藻の健康への効果について】
– 腸内環境の改善に寄与
– 免疫力の強化
– 生活習慣病の予防に効果的
– 内臓脂肪の減少に役立つ
– 美容とダイエットへの寄与
これらの効果は、適量の海藻摂取によって期待できます。
海藻の1日あたりの推奨摂取量
海藻を摂取する際の1日あたりの適切な量については、生わかめの場合は約190グラム、水で戻した状態の乾燥わかめで約160グラムが目安とされています。
これは特にヨウ素の過剰摂取を防ぐための基準です。
ヨウ素の1日あたりの摂取上限量は、厚生労働省の基準に基づいて最大3ミリグラムとされており、これは健康障害を引き起こさない量として設定されています。
これをわかめの摂取量に換算した場合、先述した量が目安になります。
海藻の過剰摂取に関するリスク
通常の食生活の中で海藻を摂取している場合、健康被害について特に心配する必要はありません。
一時的にヨウ素を過剰に摂取しても、体はそれを不要と判断し尿として排出する能力があります。
しかしながら、以下のような摂取方法には注意が必要とされています。
【過剰な海藻摂取に関する具体例】
海藻の過剰摂取は、以下のような場合に該当する可能性があります。
– ダイエット目的で、毎日の食事に大量の昆布スナックを含めている場合。
– 間食としての口寂しさを紛らわすために、毎日茎わかめを継続的に食べている場合。
食事を海藻製品で置き換えたり、日常的にスナックとして海藻を大量に摂ることは過剰摂取に該当し、ヨウ素の過剰摂取による甲状腺機能障害のリスクが高まる可能性があります。
このような摂取習慣は特に注意が必要です。
また、ヨウ素の吸収が特に高いとされる胎児や乳幼児がいる家庭では、妊婦や授乳中の女性は海藻の摂取量に制限を設けることが推奨されます。
海藻の賞味期限に関する情報
海藻の賞味期限は、加工方法によって異なります。
わかめを例に取ると、以下のような加工方法に応じた賞味期限の目安が存在します。
【加工方法に応じたわかめの賞味期限】
– 生わかめ：冷蔵保存の場合、約3日間
– 湯通し済みの生わかめ：冷蔵保存で約5日間、冷凍保存で約1か月
– 塩蔵わかめ（湯通し後に塩漬けにしたもの）：常温保存で約1か月、冷蔵保存で約半年、冷凍保存で約1年
– 乾燥わかめ：約1年間
これらの期間は平均的な目安であり、実際の賞味期限は商品パッケージに記載されている情報を参照することが重要です。
生わかめは賞味期限が短く、乾燥することで長持ちする傾向があります。
賞味期限は未開封状態での保存期間を示しており、開封後は品質が劣化するスピードが速まるため、できるだけ早めに消費することが望ましいです。
総括
海藻は、適量を守って摂取することで、高い栄養価を持ち健康に良い食品となります。
市販される海藻製品を使用する際は、1日の推奨摂取量を守り、バランスの取れた食生活を意識することが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
参考になれば幸いです。
